2003年から長らくデジタル領域のディレクションやシステム設計、マーケティング・キャンペーンの全体統括に携わってきましたが、近年、プロジェクトの現場で明確な「停滞」を感じるようになりました。
企画に行き詰まると、誰もがすぐに生成AIを開く。確かに数秒で綺麗な提案書のアウトラインは完成します。しかし、出来上がったマーケティング施策や新規事業のアイデアは、どれも「他社がすでにやっていることの焼き直し」ばかり。AIの学習データという“過去の平均値”に依存する限り、人の心を刺すエッジの効いたブレイクスルーは生まれません。
そこで開発したのが、あえてすぐには答えを出さず、人間の思考を極限まで引き伸ばすツール『Great Minds Oracle』です。(開発の裏話については前回の記事をご覧ください)
今回は、この「思考の制約ツール」を、実際の仕事やチームビルディングでどう使い倒すのか、3つの実践的なビジネス・ハックをご紹介します。
Hack 1. 「AIの叩き台」×「神託」でアイデアを異次元に昇華させる
ゼロから自分の頭だけで考える必要はありません。AIの効率性と、オラクルの「バグ」を組み合わせるのが最も強力な使い方です。
例えば、新しい自社Eコマースの販促キャンペーンを考えるとします。
- まずはAIに聞く: 「アパレルECの新規顧客獲得のためのキャンペーン施策を10個出して」
- AIの回答(無難な正論): 「SNSでのインフルエンサーPR」「初回限定送料無料」「LINE登録で500円オフクーポン」……
- ここで『Great Minds Oracle』を起動する。
仮にツールで「孫子(戦わずして勝つ)」×「予算ゼロ」というカードを引いたとしましょう。 ここからが、あなたの脳の出番です。
思考のジャンプ: 予算ゼロで、戦わずに勝つ……? 競合と同じように広告費をかけてインフルエンサーに頼むのは「戦い」だ。ならば、すでに熱狂的なファンを持つ「別のニッチなコミュニティ」にタダで乗っかることはできないか?
導き出されるインサイト(例): 「自社の服を着て地元の清掃ボランティアに参加した写真をアップしてくれたら、永久VIP会員にする(広告費ゼロで圧倒的なブランドロイヤリティと社会的意義を獲得)」
AIが出した「割引クーポン」という凡庸なアイデアが、偉人と制約のフィルターを通すことで、一気に独自性のある企画へと変貌します。
Hack 2. 会議の空気を一変させる「チームビルディングの起爆剤」
定例会議やワークショップが、いつも同じような意見のループに陥っていませんか?役職や立場の壁があり、若手が大胆な意見を言えない「心理的安全性の低さ」が原因であることも少なくありません。
そんな時、プロジェクターに『Great Minds Oracle』を映し出し、ツールを「会議のファシリテーター」あるいは「悪役」に仕立て上げます。
たとえば、システムの仕様策定やUIデザインのレビュー会議で、議論が停滞したとします。そこで代表者がボタンを押します。
「ジャンヌ・ダルク(純粋な信仰と突撃)」×「鏡の世界(真逆のターゲット)」
「……よし、今から5分間、我々のターゲットユーザーを『ITリテラシーが全くない80歳のお年寄り』だと仮定して、ジャンヌ・ダルクのように一切の妥協なく、この複雑な管理画面の機能を削ぎ落とすとしたらどうする? 全員でブレストしよう」
「ツールがそう言っているから仕方ない」という免罪符ができることで、役職に関係なく、普段なら絶対に言えないような極端で笑える意見が飛び交い始めます。大喜利のように楽しみながら、結果的にプロジェクトの「真のボトルネック」を浮き彫りにすることができるのです。
Hack 3. 個人のキャリアや「リーダーの孤独な決断」を客観視する
仕事の悩みは、企画出しだけではありません。独立、キャリアチェンジ、あるいはプロジェクトの撤退判断など、自分一人で決断を下さなければならない場面があります。
複雑なシステムアーキテクチャの根幹をひっくり返すような決断や、リソースの再配分など、数字だけでは割り切れない問題に直面した時、このツールは「優秀な壁打ち相手」になります。
「ブッダ(執着を捨てる)」×「拡大鏡(100万倍に拡大/縮小)」
自分の悩みをこのフィルターに通すと、「今の自分がこだわっているこの機能(あるいはポジション)は、10年後の未来から見たら、単なる小さな見栄でしかないのではないか?」と、驚くほど冷静に事象を俯瞰できるようになります。
思考を放棄せず、楽しんで「汗」をかこう
AIは作業を「時短」してくれますが、新しい価値を創造するには、どこかで必ず脳に「汗」をかくプロセスが必要です。
『Great Minds Oracle』は、その思考の汗をかく過程を、極上のエンターテインメントに変えるためにデザインしました。
企画書が真っ白な時、会議室のお通夜のような空気を打破したい時、あるいは自分自身のキャリアの羅針盤がブレた時。ぜひ一度、先人たちの強烈な哲学と理不尽な制約を、あなた自身の脳にぶつけてみてください。